これからの夏の季節は、海や川に遊びに行って魚にふれる機会も多くなるのではないでしょうか。そんな魚たちですが、じっくり観察してみたことはありますか。サバ、タイ、ヒラメなど、普段私達が食べている魚を思い出しても、その姿かたちはとても多様です。
実は、魚の多様な姿かたちには、それぞれが自然界を生き抜く工夫が詰まっているのです。今回は、そんな身近な魚の体に隠された生存戦略を紹介していきます。 この記事を読んで、魚の姿かたちに隠された生きるための工夫を知り、さらにこれからの時期にぴったりな、「夏休みの自由研究のヒント」としてもお役立てください。
スーパーでもよく目にする魚、サバやアジ、イワシ。その姿を思い浮かべてみると、すべて背中側は青黒く、お腹側は銀白色をしています。
この体色パターンにはしっかり意味があります。海の中では、光は水面の上から差し込んできます。
そのため、海の中で上を見ると、景色はは明るく見え、逆に下を見ると暗い色の景色が広がっています。
魚たちはこの違いを利用し、背中を暗い色にすることで、上から見たときに海の深い暗さに溶け込んでいます。反対に、お腹を明るい色にすることで、下から見上げたときに水面から差し込む光の明るさに溶け込みます。下のイラストを見ても、上半分が暗く、下半分が明るいAの方が、全体が均等なBに比べて目立たないことが分かります。
さらにこの色の組み合わせは、立体的な体が持つ自然な陰影を色の逆転によって打ち消します。その結果、魚は水中で輪郭を失い、どこから見てもまるで存在を消したかのように錯覚させるのです。
この仕組みは「カウンターシェーディング」と呼ばれます。
(上が暗く、下が明るい色の物体の海中での見え方)
この仕組みは多くの魚に共通して見られます。サバ、アジ、イワシの他には、マグロやカツオなども背側が暗く、腹側が明るい色にはっきりと分かれています。これらの魚は沖合を泳ぐ回遊魚であるという共通点があり、障害物がほとんどない環境で、自身の身を隠す手法がこのカウンターシェーディングなのです。また、これらの回遊魚は模様だけでなく、体の形も流線型の速く効率的に泳ぐことができる流線形で、沖合の環境に適応した共通の特徴も持っています。
サバやマグロといった魚の模様が、広い海で身を隠すための工夫であると紹介しました。
魚のカモフラージュの方法はほかにもあります。岩礁に潜むカサゴやその仲間は、ごつごつとした姿かたちと、岩肌に似た複雑な模様で、岩場の背景にきれいに溶け込みます。さらに、砂地に暮らすヒラメの仲間も海底で目立ちにくい薄い体と、体の色そのものを周囲の砂の色に似せることで上手に身を隠します。
(周りの環境にカモフラージュする魚:オニオコゼ(上) オオシタビラメ(下))
このように、模様や色だけでなく、体の形も組み合わせて観察してみることで、その魚がどんな環境で暮らしているか、生き方そのものを映し出しているといえるでしょう。
また、少し意外な例として、キンメダイや、ノドグロという名称でも知られるアカムツなど、深海にすむ魚には赤い体色をしている種類が多くいます。実はこの理由も、カモフラージュ効果を高くするための魚の工夫なのです。水は光を吸収する性質があり、光の波長が長いほどは早く吸収されます。そのため、太陽光のうち赤い光(長波長の光)は水に吸収されやすく、深海では赤色が「見えない色」になります。深海魚の真っ赤な体が、その環境では黒と同じように周囲に溶け込む隠蔽色として機能しているのです。
これらの魚は体の色だけでなく、暗い深海で生きていくために光を集めやすい大きな目をしているという共通点もあります。
(深海にとけこむキンメダイの体色)
これまでは、周りの環境に隠れるために工夫された、魚の色や形に注目してきました。しかし、南の海や水族館では、これまで説明した魚よりも、ずっと鮮やかな模様をしている魚も見られます。
タテジマキンチャクダイ(Pomacanthus imperator)は、ニザダイ目(旧スズキ目)キンチャクダイ科の魚で、その名の通り、鮮やかな青と黄色のストライプが特徴的な魚です。実は、一見派手で、身を隠すのには向いていない魚の模様にも、大きな意味があります。
この魚が生息する熱帯のサンゴ礁地帯には、数多くの種類の魚が生息しており、とても良く似た別種もいます。このような環境では、独特な模様が、繁殖時や縄張り争いにおいて、個体の識別や種の区別に役立っているといわれています。
(タテジマキンチャクダイの幼魚)
また、この魚の幼魚は、濃い紺色の体に、白い同心円状の縞模様を持っています。成長にともなって模様が大きく変化することで、異種間の区別だけでなく、子どもと大人の区別にも役立っているといわれています。
では実際に身近な魚の姿かたちを観察してみましょう。
下の写真はumito.担当者がスーパーで購入したカラフトシシャモ(Mallotus villosus)です。
カラフトシシャモは日本近海でとれるシシャモに似た魚で、価格が手頃でたくさん流通している傾向があります。
(カラフトシシャモ 上:オス 下:メス)
観察してみると、体長は15cm程度で、細長体つきをしています。
まず体色は、カラフトシシャモもサバと同じように背中側が暗く、お腹側が明るい色をしています。
次に、口は大きく広げることができ、プランクトンなど小さな生物を飲み込んで、エラでこしとって食べることができます。イワシも同じようにプランクトンを食べるための広がる口をしています。
また、“シシャモ“と聞くと、子持ちシシャモを思い浮かべる人も多いかもしれません。
実際に、カラフトシシャモでも春から初夏にかけての産卵期のメスは、張っていることが観察できます。オスメスの差は、尻ビレに注⽬することでもわかり、オスの⽅がメスに⽐べて⼤きく、体のサイズも一回り程度大きくなります。
カラフトシシャモについてより詳しく紹介している記事はこちら
シシャモとカラフトシシャモ、皆さんはどこまでご存知ですか?
魚一匹に注目してもたくさんの気づきがありました。
さらに単に見て観察するだけではなく、実際に触ったり、絵を描いたりすることで、より細かい魚の特徴に気づくことができます。他の魚と比べて違いを探しても新しい発見があるかもしれません。
絵を描く際は、自由研究としても利用可能な、「魚観察シート」をダウンロードして参考にしてみてはいかがでしょうか。
(※umito.担当者の記入例)
今回は魚の姿かたちに隠された、生きるための工夫を紹介してきました。
これをきっかけに、スーパーで売っている魚だけでなく、海や水族館で泳いでいる魚、一匹一匹にも注目して、観察してみてはいかがでしょうか。