皆さんは寿司のネタといえば何を思い浮かべますか?日本に住む多くの人が、マグロと答えるのではないでしょうか。
実際に、Umiosが2026年に実施した回転寿司でよく食べているネタに関する消費者調査では、1位こそサーモンに譲ったものの、トップ10の中に赤身や中トロ、大トロ、ネギトロ、ヅケと様々なマグロのネタがランクインするなど、根強い人気を誇っています。
(回転寿司に行った際によく食べるネタ(出典:Umios「回転寿司に関する消費者実態調査2026」)
本記事では、このマグロ、特にクロマグロを美味しいまま食卓へ届けるために、Umiosグループが取り組む「短期蓄養」についてご紹介します。
まず、クロマグロについてご説明しましょう。
クロマグロ(Thunnus orientalis)は、スズキ目サバ科に属する大型魚です。成長したものは体長3メートル、体重400kgを超えることもあり、ほかのマグロ類と比べても、最も大きくなる種類です。世界各地の外洋に生息しており、日本近海では黒潮に乗って回遊してきます。大海原を止まることなく泳ぎ続けながら、イワシやサバなどの魚を食べて暮らしている様子は、まさに海の王者と呼ぶべき存在です。
現代でも人気のマグロですが、日本人とマグロの歴史は古く、縄文時代の遺跡からもマグロ類の骨が発見されています。その後、江戸時代になると、ヅケ(醤油漬け)として庶民に親しまれ、昭和以降に冷蔵技術が普及してからは脂の豊富なトロの部分も珍重されるようになりました。
クロマグロは世界的な資源管理の対象になっている魚です。
かつてクロマグロは、世界各国で過剰な漁獲が行われた結果、急激に数が減ってしまいました。
対策として、世界の全ての海域で資源状況が厳しく監視されており、日本を含む太平洋の西側では、ISC(北太平洋まぐろ類国際科学委員会)による資源評価を踏まえ、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)で漁獲上限を含む資源管理措置が定められています。
近年は未成魚・成魚ともに漁獲量の上限が設けられ、厳重に資源管理が行われています。その結果、大型のクロマグロの資源は回復傾向となっています。
(クロマグロ)
このような現状のため、新規の漁獲枠取得は難しく、安定的にクロマグロを調達できる企業は限られています。Umiosグループではマルハニチロ時代から引き継いだ漁獲枠を活かし、安定的なクロマグロの安定供給を実現しています。そして資源管理と両立する形で注目されているのが「養殖」です。
「養殖」と聞くと、魚を獲るのではなく育てるというイメージを持つ人が多いかもしれません。
実は養殖とは一つの決まった方法ではなく、例えば「完全養殖」「養殖」「蓄養」など、クロマグロを育てる段階やその目的によって養殖方法が異なります。
中でも今回取り上げる、「蓄養」とは天然で漁獲したある程度育った魚を、一定期間生簀で育て、出荷時の状態に仕上げる手法です。
(完全養殖・養殖・蓄養の違いを示す比較図)
Umiosグループが取り組む短期蓄養では、5月~6月頃に、100kg以上の天然クロマグロの成魚(5~6歳)を原魚として蓄養を開始し、そこから約半年間という短い時間で丁寧に飼育され、その後出荷されます。この時期のクロマグロは産卵の影響で魚体、特に腹側の身の脂肪が落ちており、このクロマグロを飼育して、トロが多くとれる状態にすることで、短期間にクロマグロの価値を上げることができるのです。
また、短期間で養殖することで、かかるエサや養殖に必要なエネルギーが削減され、台風などの災害に遭う確率も下げることができます。
Umiosグループの大洋エーアンドエフ株式会社(TAFCO)ではこの「短期蓄養」を行う養殖施設が日本に2箇所存在します。
(TAFCO短期蓄養クロマグロの養殖場)
しかし、この養殖場近海に100kg以上の天然クロマグロがたくさんいるわけではありません。飼育元となるクロマグロの原魚は主に対馬近海海域で漁獲され、70マイル(約130km)も離れた養殖場まで運ばれます。
では、どのようにして、養殖場まで運ぶのでしょうか。
旋網漁法で漁獲されたクロマグロは、改良された曳航用生簀(えいこうよういけす/船に綱で引かれることで航行する移動式の生簀)に生きたまま入れられ、養殖場まで運ばれます。Umiosグループでは魚にかかるストレスを最小限に抑えるために生簀の設計を改良することで、長距離移動でも魚体へのダメージを抑えています。さらに、原魚の疲労や魚同士の衝突を避けるためには、複雑な潮流を読みながら、曳航速度を調整する、長年培われた高度な曳航技術が必要です
このようにして養殖場に到着したクロマグロは、100kg以上に成長するまで、野生環境で生き抜いた個体です。そこから約半年間で、150kg前後になるまで育てられることで、尾が細く痩せている魚体から脂ののった丸みのある状態に仕上がります。
すなわち、短期蓄養を経て出荷するクロマグロは、天然の美味しさだけではなく、画像のように、身が白く見えるほど脂のさしが入っており、しっかりとしたトロも堪能できる理想的な特徴をもっています。
(原魚と短期蓄養後の違い(魚体の大きさ))
(原魚と短期蓄養後の違い(身質))
前の章では、「短期蓄養」というクロマグロの育て方の工夫をご紹介しました。しかし、どれほど丁寧に育てたクロマグロも、適切に鮮度を保たなければ、美味しさや価値を届けることができません。Umiosグループでは、この「届ける」ことに関しても様々な取り組みを行っています。
魚の鮮度は温度と密接に関係しています。温度が高くなるほど酵素や微生物の働きが活発になり、鮮度の低下が加速します。クロマグロのような大型魚はとくに身の量が多く、内部まで均一に冷却することが求められます。
そのため、取りあげられたクロマグロを、速やかに中心まで体温を低下させ、締め・血抜き、えら・内臓除去といった傷みやすい部分の処理を迅速に施し、そのまま船倉でー5℃・2時間の一時冷却を行います。
このスピード感が鮮度を保ったままクロマグロをお届けするための肝なのです。
また、輸送に関する取り組みとして、海水氷(かいすいごおり)を使った低温管理で発送しています。水氷とは、砕いた氷と水を混ぜ合わせた状態のことで、魚体を水氷で包むことで隅々まで0℃近い温度で均一に冷却することができます。
さらに、コンテナの中でクロマグロを水氷に包み込むこの方法は、150kg以上あるクロマグロの自重による圧迫や衝撃から身の品質を守りながら安全に輸送することにも効果的です。
(流通中のクロマグロの鮮度を保つ工夫)
今回ご紹介したように、Umiosグループは、美味しいクロマグロを皆さまに届けるため、生産すること、そしてそれを届けることにこだわりをもって取り組んでいます。
皆さんも回転ずしなどでクロマグロを食べるときには、事業者の工夫や、ストーリーを思い出してみてくださいね。
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